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凄惨な戦いの後、マルコとストークは今後の方針を考えていた。
今すぐにでも、我が方から打って出なければならない。時間が経てば経つほど、こちらは消耗し、物量で勝る帝国とフェニックスの残党が優位に立つからだ。
しかし、数度の襲撃を受けてユニティの脆弱さが明らかになった今、遠征部隊を派遣するのは愚の骨頂だろう。また、今でこそヘングなどの近場が戦場であるが、今後ストートや首都のヘフトを攻撃するのであれば、拠点を留守にする時間も増えてしまう。
「ユニティの強化」
これがマルコたちの当面の目標となった。
そしてスケルトンのバーンには妙案があった。それは「見張り塔」の建設である。
ユニティに合流する前は、バーンもフロッドランドの見張り塔に住んでいた。
その高さを活かし、屋上からハープーンの雨を降らせれば、いまより効果的に襲撃者を撃退できるはず、そうバーンは考えていた。見張り塔と防御壁をうまく組み合わせれば、強力な防御陣地になるだろう。
マルコとストークもそれを聞いて納得する。しかし、肝心な「技術」が彼らにはない。
バーンが言葉を続ける。古代の技術書である「エンジニアリングリサーチ」があれば、塔の建築に必要な知識を得る事が出来る。その書物は主に古代の遺跡で見つかるという。そして、マルコ達がまだ探索していない遺跡は、大陸の北西に固まって存在する。
「わかった。俺が行ってくる」
周囲の反対を押し切り、マルコが一人、その地へ向かうこととなった。
「すぐ帰ってきてくれよ」
ストークは不安そうな顔をして言う。なぜならマルコが向かう土地は、邪悪なカニバルどもの巣窟であるからだ。もっとも、カラテの達人であるマルコが後れを取ることはないだろう、ストークはそう自身に言い聞かせる。
「フェニックスの残党がまだ平原にのさばっていると聞く。気をつけて」
元パラディンのグリフィンもマルコを送り出す。
ちょうどワールドエンドを超えたあたりだろうか、想定どおりカニバルの群れに出くわす。相手が丸腰だと気付き、カニバルたちは興奮してマルコに襲い掛かる。
しかし彼らには運がなかった。マルコはカラテのタツジンだったからだ。
繰り出される拳に慈悲はない。
血まみれで横たわるカニバルどもを横目に、再び走り出す。
大陸の北西の辺境を一人、走っていく。
高台にある廃墟で足を止め、ふと景色に息をのんだ。
まだ知らない風景が沢山ある、そうマルコは思った。帝国とフェニックスの残党との戦いが終われば、街を誰かに託し、一人で旅に出ても良いかもしれない。縁もゆかりもない土地で、見知らぬバーに入り、初めて見る酒を飲み、陽気な酔客と語らう。賞金首となってしまったマルコには叶わぬ日常だ。
バックパックに入れたダストウィッチを頬張りながら、マルコは我に返る。ユニティには自分を待っている仲間が沢山いる。そして、あの街は自分が一から作った街ではないか。干しサボテンすら満足に作れなかった街が、今や大所帯を養えるまでに成長している。そのユニティを守る責務が、自分にはある。
少し休憩を取ってから、マルコは再び歩みを進める。
高台からすぐ近くにある遺跡で、マルコは目的のものを見つけた。
鉄グモに見つからないように、すぐに外に出る。
そして拠点に戻る前に、ブラックデザートシティまで寄り道をする。
「古い雑誌にガラクタのかけら、面白い形の石。我々は使い物になるようなものは扱っていないよ。しかし、誰かのゴミは誰かの宝だというじゃないか。さあ、よければ見てってくれよ」
クインと名乗るスケルトンが開く店なら、探しているものが見つかるかも知れない、そうストークから聞いていたマルコは、在庫を見てほっと一安心し、幾許かのキャットを払ってそれを得た。
拠点に戻り、早速見張り塔の建築に取り掛かる。
周りを壁で囲む。
屋上にタレットを設置すれば、
今まで以上に強力な防御陣地が完成した。
そして、陣地の完成を待っていたかのように、フェニックスの残党が襲い掛かる。
門は簡単に破られてはしまうものの、パラディン達も驚いたことだろう。
入り口に殺到してきた兵士達は、もはやタレットによって満身創痍というありさまだ。
今までよりもはるかに楽に敵を撃退できたが、まだまだ改良の余地はあるかもしれない。マルコはストークに、陣地の更なる改良を指示した。
そしてマルコ達は、ヘング再攻略を決意する。
敵襲の報があればすぐにユニティへ戻ってこれる距離であるし、この陣地があれば多少負傷者が出ていたとしても、容易に敵を跳ね返せるはすだ。
鉄グモ3体を引き連れた遊撃部隊は、再びヘングの前にたどり着く。
決戦の火蓋はまもなく切っておろされるだろう。
つづく。