いわゆる戦争ゲーム(ハーツオブアイアンやステラリス、トータルウォー、シヴィライゼーション、はたまたBFもか)をよくやる私にとって、戦略や戦術といったものは常々興味のあるものでした。
一方で戦略だけに留まらず、何故国家がその戦略をとるに至ったのか(古代ローマの属州政策とか)を考えるのも、なかなか示唆に富んで面白いと私は思うのです。
本書「失敗の本質」は、日本軍の個々の失敗を取り上げることで、戦略や戦術の枠を越えて「日本軍が失敗に至った原因は何か」さらに「今日まで引き継がれている失敗の本質は何か」を問うものです。
私が特に勉強になったのは「過去の成功体験を捨てることの大切さ」です。
中でも本書では、日露戦争での成功体験(東郷平八郎によるバルチック艦隊撃破など)が見直される事なく第二次世界大戦に突入した事を指摘します。よくゆう「大艦巨砲主義」ですね。対してアメリカ軍は戦いながらも自己変革をする事で、自軍の強化を図る事ができました。
また、本書が指摘する、「偉大な個人の成功体験を人的なつながりを利用して組織の末端まで伝えていく」という組織風土は今にも通じると思います。頻繁に開かれる会社の飲み会、そこで披露される上司先輩の武勇伝(何回も聞いたよ)、自分の身の回りを考えれば枚挙に暇ないですよね。伝えられた成功体験は、時間が経つにつれてさらに組織内で先鋭化されていきます。
結局そうやってガラパゴス化した組織は、本書の指摘の通り、ダイナミックな環境変化に耐性を持たないのでしょうね。
自分はそういった閉鎖性の輪からは無縁でいたいなと思いますが、それはなかなかむつかしい。だって空気を読む日本人ですから、僕は。
せめて、自分の成功体験に奢らず、失敗から逃げずに学ぶ事で、自身を高めていければと思うのでした。