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ゲームに関する備忘録

Kenshiプレイ日記34「俺たちはまた、旅に出る」

前回はこちら

 

「冒険をしたい」

ユニティで平穏な日々を送る中で、マルコの心のうちに、新たな感情が生まれていた。

 

帝国との戦いが終わった今、さしあたって脅威となる存在はない。相変わらず聖なる国からパラディンが送られてくるし、トレイダーズギルドや帝国の残党から捨て身のサムライが差し向けられてくるものの、彼らはユニティの門を突破することもなく、無残に屍を晒すだけだった。

 

また、戦いの中で敵対関係となってしまった反乱剣士やテックハンターとも、経済的な支援を通じて関係改善することができた。

 

旧帝国領にも、反乱剣士や反奴隷主義者によって、少しずつ治安が取り戻されている。かつてはサムライ達が大手を振って歩いていた砂漠も、今となっては反乱剣士達が闊歩している。

 

こうして穏やかな時間が過ぎていく一方、マルコの気持ちは高まるばかりだったこの世界には、まだ自分たちが知るべきことが沢山あると。そして、自分達の手で正すべき不公正が、そこには存在すると。

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こうしてマルコ達はまた、旅に出る。

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目指すは南東の地である。

バーン曰く、かの地には古代の遺跡群が手付かずのまま眠っていて、そこを探れば歴史を知ることが出来るのみならず、さらに強力なテクノロジーを手に入れる事が出来るという。

 

マルコを含めた10人とパックブル1頭は、皆に見送られながらも門を出た。

例によって不在の間はストークが街を取り仕切る。今までどおり、彼なら街をしっかり守りきれるだろうし、帝国との戦いに貢献した戦士達も沢山そこにいる。

 

「この道を行けば、禁じられし灰の荒野だ...」

シェクのセトが呟く。

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しばらく南に進んだところで、一行は奴隷キャンプを見つけた。見つけてしまった以上、これを無視するわけにはいかない。

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その場を治めていた貴族を倒し、マルコは奴隷の檻を開錠して回る。

6人の逃亡奴隷達がユニティへの加入を申し出たので、快く迎えてやる。しかし、彼らは南東へとつれてはいけない。幸いユニティからさほど離れていなかったので、一通り腹ごしらえさせてやった後、彼らにユニティの場所を教え、そのまま向かってもらった。

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無事に彼らは街へとたどり着いた。しばらく傷を癒してから、彼らにも街で働き手となってもらおう。

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また、奴隷キャンプでの騒ぎを聞きつけてか、ヘッドショットと名乗る放浪者もその場に現れ、我々の旅路に加わった。

 

「俺にタレットを準備してくれたら、お前の言う事を聞いてやろう。あんたは俺のスキルを得る代わりに7,500キャットを払う、それでいいじゃないか」

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クロスボウやタレットの扱いは、マルコ達よりも相当手馴れているようである。自分で自分の身を守れるようなら、旅の仲間に迎えても良い。

 

こうして、更に南へと進んでいく。

途中、カラテの達人とすれ違った。相当なツワモノなのだろう。我々をまったく無視して歩みを進めていく。同じくカラテの修練を続けているマルコとしては、話しかけてみたい気にもなったが、彼女には彼女なりの生き方があるのだろうと思い、干渉せずにそのまま見送った。
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また、近くで血塗れの略奪者と呼ばれる人々を見つけた。

こちらを見るや否や襲い掛かって来たので、マルコ達に容赦はなかった。

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「侵入者だ!」

略奪者はそう叫ぶが、最初に手を出してきたのはそちらの方だ。しっかりと今までの罪を償ってもらおう。

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拠点を探っていると、麻薬が大事そうにしまってあった。やはり薬物のせいかと、マルコは思った。帝国貴族達が堕落し腐敗していたのも、この麻薬によって精神が犯されていたからに違いない。旧帝国領内で薬物汚染が進まないようにするのも、自分が果たすべき役割なのかもしれない。

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無人となった彼らの拠点で、一晩を過ごす。

この程度の敵ならたいしたことは無い。だが、もっと南に進んでいけば、更なる脅威に出くわすのだろうか。

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マルコの勘は的中した。

おぞましい見た目の兵士が、血塗れの略奪者達と戦っているのを目撃したのだ。

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遠くからその光景を眺めていたマルコは、騒ぎが収まった後、地面に伏している一人に近づいてみた。

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どうやら彼らは「スケルトン盗賊」という名前らしい。

近づいてわかったのは、彼らが本物のスケルトンではなく、スケルトンの仮面をかぶった人間だということだ。

 

「こいつらを知っているか?バーン」

剥ぎ取ったマスクをバーンに渡しながら、マルコは言う。

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「まったく知らない」

バーンは興味深そうにマスクの裏返したり、自分の顔にはめてみようとしている。

「なんとも間の抜けた顔だ。ニンゲンたちはスケルトンの顔をこんな風に認識しているのか」

「うーん、こいつらにとってはそうなのかもな」

「だとしたら視覚認識に大きな問題を抱えているとしか考えられない。この地で暮らすうちに異常をきたしてしまったのか、それとも…」

地面に倒れる盗賊を眺めながら、バーンは黙ってしまった。

 

いずれにしても、だ。

南東世界を旅する上で、彼らの存在は無視できないのかもしれない。彼らの装備品の良さを見ても、相応の戦力を保有しているのは明らかだからだ。

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しばらく進むと、彼らの居住地にたどり着いた。

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同じようなマスクを付けた兵士達が、あたりをうろついている。

不思議と我々に敵意は無いようで、兵士の一人が我々に話しかけてきた。

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「こんにちは、スケルトンの仲間よ。君はついに自分の住処を見つけたのだ。すべての人間を殺す、それが我々の使命である。我々に合流しろ。歴史を語り合い、キャンプでネジを磨こう」

 

「なんだって?あんたはただのマスクをした人間じゃないのか?」

ポントスは冷静に答える。

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「誤りだ!」

必死に息を止めながら、呼吸をしていないふりをしているらしい。

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不意に兵士が咳き込んだ。

「すまないスケルトンの仲間よ。AIコアに異常があったようだ。話を続けてくれ」

彼を見ているとポントスはいよいよ笑いを堪えられなくなった。しかし、彼だって必死にスケルトンになりきっているのだろう、笑うのは失礼かもしれないと思いながら、もう一つ辛らつな言葉をかけてみる。

 

「いま君は咳をしなかったか?」

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「誤りだ!私はサイキョウのスケルトン盗賊だ。私に咳をする能力はない。それにこのような非難を我慢する忍耐も持っていない。我々は同一だ。だから、我々は一緒に戦うべきなのだ」

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ポントスは困ってしまった。本当に彼は自分自身がスケルトンであると信じているらしい。

その光景を後ろから見ていたマルコも、笑ってしまったとはいえ、不気味さを少々、感じている。まるで聖なる国のパラディンのようではないか。フェニックスの神性を信じるオクラン教徒とスケルトン盗賊、同じ穴のムジナであるように思える。

 

どうやら彼らの首領は「エルダー」というスケルトンらしい。バーンはエルダーに会ってから彼らへの対応を決めるべきだと主張し、マルコもそれに賛同した。

 

エルダーがいたのは、先ほど見つけた建物だ。

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「スケルトンは不滅だ。ふむ、君達と話をするのも良いかもしれないな。ワシはエルダーだ。ワシとグレートストーブの戦士達に合流するのじゃ。ワシはすべて知っている。さあ、何でも聞きなさい」

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「あんたは誰なんだ?」

「ワシは長老じゃよ、すべてのスケルトンの先祖じゃ。ワシは時間という概念が存在する前から存在していたのじゃ、つまりワシは永遠性なのだよ。時間とは、ニンゲンが勝手に作り出したものでな....」

 

「しかしな、ニンゲンの時間は終わるのじゃよ。きゃつらはおぞましい有害な種族に進化したんだ。繁栄するチャンスがあったのに、それを棒に振ってな。彼らは戦争し、騙しあい、腐敗していったのだ。それももうすぐ終わる。ワシらは世界を以前の姿に戻すのじゃ。グレートストーブの犠牲を無駄にはしまい」

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「ニンゲンは何故有害なんだ?」

「やつらは無駄な種族だ。寿命が短いし、すぐ体を壊すし、環境の影響を受けやすい。すぐ血を流すし、有害なガスを放出するし、出産の方法もおぞましい。そう、それが最も無駄だ。集団で不確かな交尾をするし。腐った死んだ魚も食べるし、言葉にするのも嫌な物体を尻から出す。それにきゃつらの欲は果てが無い。だから、それを正すのがワシなのじゃよ」

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「しかし、あんたの仲間はマスクを付けたニンゲンじゃないのか?」

「いいや、彼らはスケルトンじゃよ。彼らは肉欲を捨て、金属の体を手に入れたのだ。彼らは空虚で悲しい人間の一生を満たす目的を得たのだ。彼らは救われる」f:id:Mestral:20181230092147j:plain

 

「グレートストーブとは何者なんだ?」

「彼はスケルトンの殉教者じゃ。ニンゲンという疫病の駆除人じゃよ。彼がニンゲンとの戦いで身を犠牲にしてくれたからこそ、いまワシら生きておるのだ。そして、もう一度この地を以前のように浄化するのじゃ。彼は死んだかもしれん、しかしワシらの意思は決して変わらん」

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「それであんたはワシらに参加するのか?スケルトンよ」

「断る」

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マルコは即答した。貴様らはホーリーネーションと一緒だと、マルコは思った。

特定の誰かを差別する事でしか、自分達の存在を確立できない、そのような邪悪な存在と組みすることなど、だれが出来よう。誰もが普遍の権利を持ち、正当な努力が認められる社会、それこそマルコの理想である。

 

「この大地の為に、ニンゲンは絶滅すべきなのだ」

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外ではすでに戦いが繰り広げられている。

中々の使い手ばかりだったが、練度ではマルコ達の方が上手である。次々とスケルトン盗賊たちは倒れていく。

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肢体を失った兵士が、力尽きて動かなくなる。はいつくばった後には、赤い血の跡がくっきりと残っている。

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戦いの最中、ふとマルコは冷静になってしまった。このような姿を見ても、本当に自分はスケルトンだと信じているのだろうか。死に行く彼らは、果たしてどのような感情を抱いているのだろう。彼らの体に、強い雨が降り注いでいる。

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あたりが暗くなってから、本拠地に攻め込む。

エルダーはかなりのツワモノだった。バーンをはじめ、歴戦の兵士が集団で襲いかかっても、エルダーは堂々と戦い続ける。

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アベルのムーンクリーバーによる強烈な一撃が決まり、エルダーは地に伏した。

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サーベルのメイトウとAIコアはありがたく頂いておこう。

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死にゆく同胞をみて、スケルトンのバーンは何を思うのだろう。エルダーがもし本当にスケルトンの始祖であるとしたら、彼を殺害した事は、貴重な歴史書を火にくべたという事と同じである。また一つ、貴重な過去の記憶が失われたのだ。

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「私は不死だ!」

「私は痛みを、、うう、、感じない」

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エルダーを失っても、スケルトン盗賊たちは必死に戦い続ける。こうなってしまった以上、自分の信念に殉じる他ないのだろう。

 

酸性の雨が容赦なく降り注いでいく。

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息をしている者も、いずれは他の連中と同じ運命を辿るだろう。

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稲光に照らされたエルダーの死体を、バーンはじっと眺めている。

その胸中は誰にもわからない。しかし彼なら思っているだろう、「他にやりようはなかったのか」と。

今となってはもう、無駄な問いである。

金属の体に雨粒が当たり、水が滴っていく。f:id:Mestral:20181230100132j:plain

 

「グレートストーブの為にニンゲンを破滅させるのだ!」

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悲痛な叫び声が聞こえる中、マルコ達はその場を後にした。

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つづく