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傷を癒したマルコ達は、再び旅に出る。
次は西の世界を目指す。途中、足を失った仲間のためにワールドエンドで義足を買い、フロットサムの村でモルに挨拶をするつもりだ。
ちょうどバストの辺りでホーリーネーションの一隊と出くわした。
見逃すわけにもいかない。
「彼らに破滅を!!」
パラディンが意気込むも、我々の精鋭に勝てるはずはない。
彼らを倒した後、メイがつぶやく。彼女は元々サムライ部隊の隊長を務めていた。
「ホーリーネーションの奴らは、貴族を生きたまま焼き殺したんだ。オクランの名の下にな。そして貴族のどら息子たちはリバースに強制連行されたんだ」
「何が言いたいかって?ああ、私は貴族を憎んでいるよ。でも、ホーリーネーションの奴らの方が非道さ・・・」
幾度かの戦いの後、無事にワールドエンドにたどり着いた俺達は、義足屋でポントスの右足を買った。これで彼も以前のように戦うことが出来るようになった。
心なしか、ポントスは満足そうに見える。この義足は哨戒用に調整されており、もともとの足で走るより、スピードが速くなるそうだ。
店主に謝意を告げ、次に俺達はフロットサムへと向かう。
折角寄ったフロットサムだったが、あいにくリーダーのモルは不在にしていた。まあ、いずれどこかで会うことだろう。
ニンジャたちの耳にもブリスターヒル陥落の報は入っており、彼らは口々に俺達を祝福してくれた。フロットサムとカニバルとの戦いは依然続いており、彼らの労をねぎらった後、俺達は町を去った。
フロットサムからしばらく西に進むと、やたらと雨が降りしきる湿地帯にたどり着いた。古代の廃墟が散在するあたりデッドランドに似た雰囲気を感じるものの、ここの雨は酸性ではないし、雷が鳴ることもない。
ゆるい地面に足を取られそうになりながら、一歩ずつ前に進んでいく。
しらみつぶしに一つずつ、古代の建物を探索していく。
朝になって気付いたが、先ほど探索した建物に覆いかぶさるように、生き物の残骸が横たわっていた。
スワンプラプターのような爬虫類にも見えるが、一体何だろう。これが生きていた時を想像し、マルコは背筋が寒くなる思いだった。こんな生き物と対峙できるほど、当時の人類は力を持っていたのだろうか。もしくは、この生き物を作ったのが人間だったのか。
考えにふけりながら途中、「バーンの塔」という名前の建物のそばを通りがかったときに、鉄グモに襲われている一体のスケルトンを見つけた。
鉄グモのきつい一撃を受けて、スケルトンは倒れている。マルコの目には、彼が今にも死んでしまいそうに見える。
思わずマルコはスケルトンに近寄り、持っていた修理キットで治療をしてやる。相当な深手を負っており、もう少し救助が遅ければ絶命していただろう。
よろよろと立ち上がったスケルトンは、自分がバーンという名前である事をマルコに告げた。
「私が推測するに、あなたは冒険者か?遺跡荒らしのようには見えないし、盗賊にも見えないな・・・」
助けてやって盗賊とは酷い言い方じゃないかと内心思いながら、マルコは答える。
「ああ、我々は冒険者で、宝を求めてさまよっているよ」
「フロッドランドは冒険者のような人にとって魅力的でしょうな。手付かずのお宝が沢山眠っているし。それに、正気な人間はスパイダーボットたちに追い掛け回されるリスクを取らないだろう。ボットたちは侵入者達に神経を尖らせている・・・」
「塔に閉じこもって生活するのは非常に退屈だよ。だから冒険者達に屋根を貸したり、いろんな情報を交換するのはとても楽しいよ」
「ということは、君も冒険者なのか?」
「そうだ、昔は私も冒険者だったのさ。スケルトンは君のような人間ほどヤワではないからね。しかし、我々の種族には稼動限界があって、故障する者も出てきた。事前の警告なく突然停止するかもしれない。」
金属の体をさすりながらバーンは続ける。
「私もすぐそうなるだろう。パーツは消耗しているし、もう昔みたいに冒険の旅に出ることは出来ないだろう。だから、私はこのフロッドランドで孤独に住んでいるのさ」
「それは残念だな。今までどんな冒険をしてきたのか話してくれないか」
「ここから南にある沼地の東のほうを訪ねていたときのことだ。いくつか過去の遺物を回収して、とても興味深かったよ。勿論、この世界が激変して以来、人間達の振る舞いはずっと観察しているよ」
「人間達の進化について教えてくれないか」
「どこでそれが始まったかすら、私は知らないんだ」
そういってバーンは首をかしげる。スケルトンも案外人間臭いところがあるんだなとマルコは思った。
「しかし、この世界の研究記録や知識を君たちと共有するのはとても楽しそうだ。数ヶ月間、一緒に行動しないか」
マルコは即答する。
「俺たちと一緒に来たらどうだ。君が望むように知識を交換しよう」
「冒険者の仲間がいれば、私はすんなり溶け込めるとずっと思っていたんだ。それに人間との交流について研究するのはとても楽しいだろう・・・。それにいつも、最後の冒険が一番楽しい思い出になるものだ。よし、さあ行こう」
こうして、俺達の旅路にスケルトンが一人加わった。
フロッドランドの遺跡を一通り探索してから、俺達はさらに西へ進んでいく。
しばらく進むとあたりは森になったが、ここは「金切り声の森」というらしい。
「理由はすぐわかるさ」
バーンの発言の意図はすぐに理解できた。
おびただしいほどの数の蛮族が、金切り声を上げて走り回っているのだ。
幸い、俺達に危害を加えようとする意図はなく、彼らは走り去っていった。
カニバルどもと生存圏が接しているせいで、彼らも気がふれてしまったのかもしれない。
哀れみの目で彼らを見送っているうちに、俺たちは海にたどり着いた。
泳いでいける距離にいくつか島があって、そこには過去の遺物や珍しい動物が存在していると、ワールドエンドの図書館や遺跡の地図で、マルコは知っていた。
慣れない泳ぎで、俺たちは進んでいく。
赤茶色の海を泳ぎきった先に、マルコ達を待ち受けているものは何だろうか。
きっと、驚きの連続になるに違いない。
つづく。