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勝利の余韻に浸りながらも、マルコ達はすぐ次の行動に移る。
ホーリーネーションに捕らえられていたサムライや傭兵たちを次々に解放していく。彼らは感謝の意を示し、いるべき場所へ帰っていった。
また、皇帝の私物も拝借していく。
意外とたいしたものはなく、皇帝と言えどもあまり華美な生活はしてなかったように思える。もっとも、大量の食料を確保できたのはマルコ達にとってありがたいことだった。
別働隊のヤンたちは、解放したサムライとともに、敵の残兵を狩っていく。
「お前達は今日、我々からうまく逃げることができた。しかし、ホーリーネーションからは永遠に逃げられないぞ」
どこからこの自信が来るのだろう。ヤンにはパラディンのこの発言がまったく理解できない。皇帝フェニックスが敵の手に落ちた今、ホーリーネーションの命運は火を見るより明らかではないか。
「あんなやつなど放っておけ」
ヤンは冷徹につぶやいた。我々が手を下さずとも、いずれサムライかシェクの一隊に襲われるだろう。そして、自分の非力さを実感するのだ。
マルコ達が出発する頃、街は冷たい雨に包まれていた。
兵士の亡骸に雨が降り注ぎ、彼らの血は川となって流れていく。
街はすっかり静まりかえり、大地に打ち付ける雨粒の音しか、マルコの耳には届かない。
聖なる国の首都として、あれほどの栄華を誇っていたブリスターヒルに、もうその面影はない。あとはリバーラプターや盗賊の群れが、この街にとどめをさすだろう。
そして、いつか建物が朽ち果て、皇帝フェニックスの像も大地に伏す。
マルコの目に、その光景がしっかりと見えている。
「あの忌々しいパラディンの監視を受けずに、草原を自由に散歩できる時代が来たかもしれないな」
マルコは一人つぶやいたが、そうではない事は十分に理解している。
「異端者どもを聖なる炎で燃やせ!」
皇帝フェニックスが連れさらわれる姿を見て、狂信者達は死に物狂いで追いすがってくる。
死にぞこないのパラディンを倒し、盗賊の群れもいなしながら、
マルコ達とリバースの元奴隷達は、ユニティに帰還することが出来た。
怪我をした元奴隷達をベッドに運び、皇帝フェニックスは我々の粗末な牢屋に閉じ込められることとなった。
フェニックスは近くを通りかかったイズミに話しかける。
「私を牢屋に閉じ込めておけると思うのか、そこの異端者。神の化身である私をだぞ。オクランの子ども達は必ず私の元にやってくる。そして、お前達は自らが犯した悪行にへの報いを受けるだろう」
それっきりフェニックスは喋ることをやめた。
イズミから内容を聞いたマルコは、フェニックスの防具をすべて取り上げ、奴隷の足かせをはめた。リバースの奴隷の気持ちを理解しろという、マルコなりの懲罰だった。
こうしてフェニックス、セタ、そしてヴィタハレンリの3名は、世間一般から奴隷として認知されるようになった。彼らが今後どのような余生を送るのか、現時点では誰にもわからないことだ。
傷を癒したマルコ達の次なる目標は、ホーリーネーションよりも西の地域を探検することに決まった。そこには古代の遺跡が山のように存在すると聞く。
フェニックスの言葉が本当であれば、拠点を更に強化すべきである事は明らかだ。
まだまだ世界は知らないことであふれているし、それを知ることでマルコ達は更に強くなれるはずだ。
つづく。