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マルコ達は一度街に戻り、ユニティの皆と話し合いの場を持った。
もし帝国と表立って戦争するのであれば、拠点を今以上に強化していく必要がある。
また、ホーリーネーションとの戦いでは、フロットサムやシェクの協力を得る事が出来たが、対帝国では味方勢力は少ないかもしれない。そうであれば、我々自体がもっと戦力を持たなければならないだろう。
このような状況で、テックハンターと敵対するのは少々間が悪いとも言える。不慮の出来事だったとはいえ、彼らに何らかの償いをし、関係回復を図る必要がある。何より、マルコ達の思想とテックハンターやマシニストの思想は、進歩的である点については一致しているのだ。
こうして出た結論は、当面の間は遊撃部隊から街の防衛に人員を割き、残りの部隊で仲間のリクルート、テックハンターとの関係改善、古代技術の回収をすることになった。
ストークをはじめとする数人が、今後街の門を守ることになる。
彼らがいれば門を破られても安心だと、マルコは思った。
心なしか、ヤギも彼らが戻ってきた事に嬉しそうである。
こうして、マルコを隊長とする19人は、再び旅路に戻った。
目指すはアドマグやモングレルといった大陸の西部である。
テックハンターの外交官がいるとしたらそこに違いないという、マルコなりの直感があった。
見慣れた道を、彼らは進んでいく。
相変わらず人狩りはこちらを見て脊髄反射的に襲い掛かってくるものの、彼らの敵ではない。
血の海が広がる光景を眺めながら、マルコは思う。
帝国を打倒すれば、このような輩を根絶やしに出来るだろうか。
人々の不幸を糧に生きる、人狩りや奴隷商人どもを。
その日まで、出会った奴隷主義者達を一人ひとり倒していく他ないと、マルコは考えている。
途中、「オクランの盾」を横切る。
ホーリーネーションが駆逐されて以来、サムライ達がここを我が物顔で歩いている。
ユニティの面々からすれば複雑である。
自分達が解放した場所を、自分達が敵対する勢力が利用しているのだから。
幸い、通り抜ける際に衝突は起こらず、マルコ達は無傷でオクランの盾を通り抜けた。
「オクランは私達を見捨てたのか...私は聖なる兄弟達を裏切ってしまったのだ...なんてことだ...」
オクランの元信者だろうか、悲痛な声を聞き流しながら、マルコ達はブリスターヒルに入った。
そう、フロットサムの首領、モルがここに拠点を移したと聞いたからだ。
久々の再開となった二人は、お互いの労をねぎらった。
今後はフロットサムのもと、ブリスターヒルに公正な統治が布かれることだろう。
しかし、モルには気がかりなことが一つあった。
バッドティースという都市が依然、ホーリーネーションの残党に占拠されているというのだ。
皇帝なき後も、異端審問官を中心に、フロットサムやシェクの攻撃からしぶとく生きているという。
それを聞いたマルコは、二つ返事でバッドティース侵攻を約束した。
白昼堂々、マルコ達は街に侵入する。
労なくパラディン達を倒していく。
「ホーリーネーションの連中には理屈が通じない。恐怖が奴らの判断をコントロールしているんだ」
スケルトンのバーンがそうつぶやく中、血のにおいにつられたリバーラプターの大群が街に入ってくる。門番のパラディンはすでにこの世にはおらず、ラプターたちは安心して「食事」をすることが出来る。
見る見るうちに、亡骸の形がなくなっていく。
夜になると、飢えた盗賊も街に忍び込んできた。
手当たり次第、パラディンの亡骸を漁っていく。
マルコはただ、その光景を眺めていた。
こうして、バッドティースという街は滅んだ。
どの勢力が後を継ぐのか、それは時間がたてばわかることだろう。
少し休憩を取った後、マルコ達は再び西へ向かうつもりだ。
つづく。