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ゲームに関する備忘録

タイタニック号の生存者を予想するAIコンペで運命の数奇さを感じた話

皆さん本当にご無沙汰しております。

 

プレイ日記の更新をほったらかして、僕はいまディープラーニングの勉強にはまっています。

 Jeremy Howardさんが主催するFastAIというサイトがあって、ざっくりいうと初心者にもわかりやすいアルゴリズムを開発し、その使い方を懇切丁寧に動画でレクチャーされています。

(興味がある人はぜひ動画リンクに飛んでみてください)

 

とりあえずひと通り勉強させてもらった僕も、何かコンペにチャレンジしてみようということで、Kaggleが主催する初心者向けコンペにチャレンジしてみました。

 

ディカプリオが主演した映画も大流行した、あのタイタニック号ですね。このコンペでは、トレーニングデータでAIが生き残った人の特徴を学び、テストデータでその人が生き残ったか否かを類推する、というものです。

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AIが学ぶ特徴は、船のグレード、性別、チケットの値段、誰と一緒に乗っていたか等の12の特徴です。

 

例えばMr. Owen Harrisは22歳男性。3等という格安の部屋で、船には兄弟か配偶者の一人と乗船していて、自身の親や子とは一緒ではなく、7.25ポンド(だいたい現在価値で5万円くらい)のチケットで、サウサウンプトンから船旅を開始しました。そんな彼は悲劇を生き延びることができませんでした(Survived=0)

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FastAIのライブラリは本当に優秀で、データバンチという訓練データと実証データを一まとめに出来るコードを、ほんの数行で完成させることが出来ます。

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とまあ、細かい話はさておき、ずぶの素人の僕でも84%の正答率をたたき出すことが出来ました。(プロの人はOverfittingしすぎだろといわないでくださいね)

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まあ世界の賢人達は余裕で正答率100%なわけですから、まあ僕の技術力はまだまだやなと思いながら、さて間違えた16%はどんな人なんだろうという方に興味がわきました。

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Confusion matrixを見ると、どうやら実際は生存(Actual=1)なのに予想は死亡(Prediction=0)という人々が16名いるらしい。

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FastAIのライブラリは本当に素晴らしくて、AIが「え、ホンマに俺間違ったん?嘘やろ?」って驚いたランキングまで簡単に表示できます。interp.plot.top_lossesってやつですね。

 

本当は画像分類するAIに使うコードを無理やり適用しているのでうまく表示されていませんが、AI君が間違えた中で一番驚いたのは、Ticket2315を持っていたBertramさんらしい。

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改めてPassengerId789のBertramさんの生死を個別に予想してみても、やっぱりAI君は間違える(Category=0だけどSurvive=1)

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逆に考えてみよう。普通は死んだと推測される状況で生き残ったBertramさんは、ある意味強運の持ち主なのか、蛇のコードネームを持った伝説の傭兵並みに強靭なサバイバル能力を持っていたのか。でもAge=1だから、母親のお陰で助かったのかもしれないですね。

 

さて、ここでそんなBeltramさんがどのような人生を送ったのか興味を持った僕は、おもむろに名前でググってみました。

 

お、すごい出てきたぞ。

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タイタニックウィキなんてあるのか知らなかった。

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Bertram Vere Deanは1910年5月21日、ロンドンで生まれた。1912年に彼の両親は、カンザス州ウィチタへの移住を決断した。そこでタバコ屋を営む準備をしていて、彼らはサウサンプトンから3等級の部屋でタイタニックに乗り込んだ。

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(幼少期の写真。彼は1歳で事故に遭っているから、事故後のもの)

 

彼と母親と妹は、悲劇から生き残ることができ、ニューヨークの病院で過ごした後、再びイングランドへと戻った。

 

救済基金の援助を受けて、彼はサウサンプトンのキングエドワード校を卒業した。サウサンプトンの造船会社に就職した彼は、George Beauchampという、同じ救命ボートに乗り込んでいたであろう人物と出会い、彼らは良き友人となった。

 

彼はDorothyという名の女性と結婚した。彼女の父親はタイタニック号の犠牲者が所有していたサウサンプトンの音楽店を買い取っていて、事件とつながりのある人物だった。

 

彼はその後、タイタニック号事件を語り継ぐ活動に精力を注いだ。沢山の取材や会議へ出席したり、役所に招かれたりもした。

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(1987年ウィルミントンにて)

 

1992年4月14日、彼は81歳で世を去った。サウサンプトンの聖マリー教会に、彼の亡骸は葬られた。

 

今も彼の妻は、サウサンプトンで平穏な日々を送っている。

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一方でAI君が生存を予想し、実際は亡くなっていたのはGifford Crosbyさん。

妻と娘に船がダメージを受けて沈みそうなことを伝えたっきり部屋からいなくなり、その後死亡が確認されたとのこと。幸い、身内は救命ボートで生き残ることができました。

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彼は運送会社の社長で、タイタニックでもファーストクラスに高い運賃を払って乗れたわけですが、生死は運賃だけでは決まらなかった、ということですね。

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こうしてAIが「死んだ」と予想した人が、就職先で同じ境遇の人と出会い、結婚もし、事故を語り継ぎながら平和な人生を送ったことと、反対に「生きた」と予想した人が、こうもあっけなく死んでいった事実を前にすると、なんとも言えない運命の数奇さを感じます。(筆者作しょぼいAIの予想なのは脇において、ですが)

 

そして、kaggleコンペのデータ上で100%の的中率を誇るAIだとしても、現実世界には無数の要素が広がっているわけですから、そのまま我々の生活に適用できるはずないですよね。今後いかにAIが進歩したとしても、運命のきまぐれには当分敵わないんじゃないかな、と思いました。

 

けど、いつの日か自分の運命が完璧にわかるAIが出来たら、どんな世界になるんだろうと想像してしまいます。きっと古代ギリシャで重要な役割を担ったデルフォイ神殿のように、そのAIは神格化され、そこから与えられる予想はまるで「神託」のように人々へ伝えられるのかもしれません。

Delphic Tholos

(デルフォイの神託―英wikiより)

 

その時、あなたはAIの「神託」を聞きますか。

多分、僕の場合は聞いてしまうんだろうなと思います。不確実は世界を生き残っていくのは、やっぱり怖いですしね。

 

 

おわり