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ユニティが次に狙うのはストートである。
砂漠のど真ん中にあるこの街もまた、奴隷商人の経済力によって繁栄をしてきた。いつからか奴隷商人と敵対関係になってから、マルコはストートに長い間足を踏み入れていなかったし、踏み入れる理由もなく今日まで至っている。
今日、マルコとユニティの軍勢は、ストートのすぐ近くの荒野に佇んでいる。
ストートに奴隷商人やトレーダーズギルドと同じ運命を歩ませる、それが目的だ。
いざ街に突入しようとするときに、反奴隷主義者達と出くわした。彼らは我々も同じ志を抱いていることを知っているのか、近づいて歓声を上げる。
「マルコ、世界は君に感謝するだろう。世界がそれを知るか否かに関わらず」
そう言い残して彼らは去っていった。彼らの助けが無くてもストートは攻略できるし、いずれどこかで共闘することもあるだろう。マルコは彼らの武運を祈って別れを告げた。
街の外でサムライの門番達を一人ずつ倒していく。
ついに軍勢は門を破った。
この街を取り仕切るのは貴族のイナバという人物だった。
貴族にしてはそれなりの腕前を持っていたものの、歴戦の兵士達に束になって襲いかかれると、どうしようもない。
逃げ惑うイナバを自宅まで追い詰める。
慈悲を見せる必要はないだろう。その場で彼の命を絶った。
散発的な抵抗はあったものの、夜になるまでにすべて片が付いた。
街中に転がるサムライの死体に、砂埃が舞っていく。
この砂漠は帝国が存在する前からも、こうして数々の戦いを見守ってきたに違いない。そしてその砂でもって、敗者を優しく包み込んでいく。
いつしかこの街も、砂の海に消えていくのだろうか。それとも別の勢力が移り住み、帝国と同じように繁栄をするのだろうか。今はまだ、その答えを知らない。
ショーバタイもまた、同じ運命を歩む。
軍勢が到着したときには、好都合なことに大規模な農民の反乱が起きていた。どちらにも組みしないマルコ達は、漁夫の利を得る格好となった。
「なんて有様だ...」
帝国臣民はそうつぶやく。しかしマルコは思う。こうなることは誰の目で見ても明らかではなかったかと。腐敗した貴族政治、過酷な奴隷労働、外敵の脅威。末期状態にある帝国に最後の一撃を加えるのがたまたまユニティであっただけなのだ。
「それに触るな!」
マルコが奴隷を解放しようとして、奴隷商人が叫ぶ。そんなものを聞く道理もない。
「足かせもはずせるよな?頼む」
慣れた手つきで足かせをはずしていく。
「自由だ、やった、自由だ!!」
こうしてまた、ショーバタイもサムライの死体であふれる結果となった。
新たなサムライの巡回部隊がショーバタイに到着するのにあわせて、反奴隷主義者の面々も街に集まってくる。彼らほど実力があれば、マルコ達の助太刀は不要だろう。更なる標的に向けて、ユニティの軍勢は足早に進んでいく。
マルコ達はその後、いくつかの奴隷キャンプを襲撃し、奴隷たちを解放していった。
勿論、貴族達に償いをさせながらだ。
「貴様らは奴隷に対して非道なことをしないように見えるな」
今や奴隷の身分に落とされた奴隷商人の親玉が、せめてもの皮肉をマルコにぶつける。
「奴隷になるわけではない、貴様らは貴族とともにこの檻の中で息絶えるのだ」
マルコは内心そう思いながらも、相手に言葉をかける価値もないだろうと考え、あえて何も言わずにその場を去った。
貴族はその後すぐ息絶えた。
そしてついにマルコ達は、帝国の首都に向かっていく。
食料を生産していた奴隷キャンプはもはや存在せず、交易により富を生み出してた北と南の港も壊滅してしまった。ストートやショーバタイという有数の街も、いまやガレキの山という有様だ。もとよりヘングとトレーダーズギルドの壊滅によって経済活動にかなりの打撃を受けていた帝国も、一連のユニティの攻撃によって経済的な死を迎えたといっても過言ではなかろう。
このような状況下、さすがのサムライたちも相当な疲弊をしているはずだ。物資を満足に得られない軍隊が、高い士気を保って戦えるわけがない。皇帝も貴族も、いつ首都が戦火に飲まれるか、恐怖のどん底にいるだろう。
ユニティの誰もが、ここで決着をつけるという熱意に満ち溢れてる。
つづく。