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ヘングはあっけなく陥落した。
マルコが門を開け、襲撃部隊が街へ乱入する。
大した脅威もない。
静かな街に、ビープの勝ち誇る声だけが響き渡る。
トレーダーズギルドの本部は、もはやもぬけの殻となっている。
やはりロンゲンなる人物も、ここにはいなかった。
こうしてマルコ達はさしたる収穫もなく、この街を去った。
マルコ達は拠点に戻る。
そして、再び各勢力の襲撃に耐える日々が始まった。
「耐えるばかりでは能がないではないか」
交戦派の意見を入れて、再び遠征を計画することもあった。
目指すはオクランの盾である。
「フェニックスの残党がオクランの盾周辺で軍を集結できるのは、オクランの盾が再びホーリーネーションの軍門に下ったからではないのか」
その仮説の元、ユニティを出発した遊撃部隊だったが、彼らの目の前にあるのは依然としてUCによって支配された城砦だった。
「UCとホーリーネーションが同盟を結んだのか?」
マルコにはそんな考えもよぎったが、次の瞬間、それは違うだろうと思った。あまりにも主義主張が異なる両者がそこまで器用に振舞えるはずはない。「ユニティを攻撃する軍勢」であれば、UCもホーリーネーションもそれに干渉しないという、消極的な協力関係にはあるのかもしれないが。
オクランの盾を攻撃した後、マルコはユニティへ戻った。
それから程なくして、マルコは遊牧民の行商から興味深い噂を聞いていた。
「大陸の南東に行けば、反奴隷主義者達の組織がある」
「しかしそこにたどり着くには、ヘング周辺と比べ物にならない危険を乗り越えなければならない」
「降り注ぐ光線、獰猛な野生動物、そして異様な部族」
「それを乗り越えた先には、冒険者が望むものが待っているだろう」
その噂を確かめるべく、マルコとバーンは旅に出る。
反奴隷主義を掲げるユニティにとって、同じ主義を持つ組織と合流するのはまさに悲願だった。さらに、これ以上拠点を発展させるためには「エンジニアリングリサーチ」の獲得が必要不可である。
こうして、マルコとバーンは南東へと旅にでる。
二人がいない間は、いつも通りストークが留守を預かる。ストーク自身もスリリングな冒険に対して魅力を感じていたが、この街でマルコの代役が務まるのはストークぐらいしかいない。
「また楽しい冒険譚を聞かせてくれよ」
ストークはそう二人に声をかけた。
見慣れた道を進み、南東世界への境界に立ちながら、二人は空から降り注ぐ光線を眺めていた。
噂はやはり本当なのかもしれない。
光線に焼かれた哀れな亡骸たちが、じっと空を見上げている。
自分達も同じ轍を踏まないようにと、二人は光線の進路を予想しながら、慎重に歩を進める。
不気味な光線が降り注ぐ地帯をぬけると、いくつかの街を見つけた。
その大半が帝国の領地であり、マルコ達は離れたところから眺めるしかなかった。
そこから南にいくと、不思議な街を見つけた。
どうやら水上に建てられた街らしい。
帝国ではなくテックハンターが治めている街のようであり、マルコ達は身の安全を気にせずに中に入ることができた。
バーンがスケルトンベッドで休息をとる間、マルコは街を散策する。
ふらっと入った鎧鍛冶で、今まで見たことのない鎧を見つけた。
「邪悪な胸当て」という名前らしい。
店主によると、ホーリーネーションの兵士が身に着けている胸当てのコピー品らしい。かの国の兵士と勘違いされるリスクを避けるべく、鋳造段階で表面を黒に加工している。確かにこの胸当て、フェニックスの信奉者からすれば「邪悪」にしか見えないだろう。
バーンの修理が完了した後、二人は再び進路を北にとる。
今までの所、帝国とテックハンターの街を見つけるばかりで、反奴隷主義者たちにはまったく出会えていない。
そしてブリンクの少し北のあたりで、小さな村を見つけた。
「ムーンガーディアン?聞いた事はあるか、バーン」
「いや、一度も」
何も知らない二人は、伝道師カルトの本拠地に足を踏み入れつつある。
つづく。