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「ビープ!」
ハイブが一人、マルコに話しかけてきた。
「こ、こんにちは。ビープ」
「どうやってボクの名前を知ったの?」
「ただの推測だよ。」
困り顔でマルコは答える。
「キミはテンサイとか、そういうタグイの人なの?」
「そんなところかな」
「キミと一緒に旅をしてもいいかい?僕は強くなりたい、強くなってkenshiになりたいんだ」
「そんなに強そうには見えないな。武器も持ってないし。何かスキルはないのか?」
「何もない」
「ハイブのみんなはボクのことを追放したんだ」
「ボクは欠陥品なんだよ。ハイブには向いてない」
「でもね、ビープはあきらめない!ビープは強いんだ!」
「ハイブを離れてから、ボクのキモチが変わったような気がするんだ。考え方っていうのかな。今までこんなにジユウというものを感じたことがなかったんだ。ボクはジユウが欲しいんだけど、どこに行ってもみんなボクの事を殺そうとしたり追いかけたりするんだ」
スケルトンのバーンがまじまじとビープを眺めている。バーンにとってビープは、興味深い研究対象なのかもしれない。
たしかに、彼はハイブとしては欠陥があるのかも知れない。ワーカードローンにしては知能が高いようには見えない。しかし、彼は従順なハイブには持ち得ない「自我」を持っている。その自我を持つに至った経緯を解明できれば、ハイブという種族を理解する一助になるだろう。
マルコも不思議とビープに興味を持ってしまっていた。
「幾らで仲間になってくれる?」
酒場で仲間をリクルートするときのように、マルコはビープに尋ねた。
「オカネ?なにそれ、わからない」
こうしてビープが新たな仲間として加わった。
モングレルには少ししか滞在しなかったが、その間にフォグマンと呼ばれる勢力が何度も街に侵入していた。
彼らの目的は食事だった。
「あああああああああううううう!!!!!」
うまく警察所にもぐりこんだフォグマンの一人が、檻に閉じ込められている盗賊を生きたまま貪っている。
いくら囚人といえどもこれは不憫だと思ったマルコは、そのフォグマンを殴り飛ばした。
街を出てからも、マルコ達はフォグマンの群れに遭遇した。
途中、ホーリーネーションから逃げてきた無法者一人に、青白い連中が束になって襲い掛かっていた。
おそらく、彼はその後連れ去られ、フォグマンたちの食事になるのだろう。
無視をしようとしても追いすがってきたフォグマンたちを、元パラディンのグリフィンが先頭となって叩き潰していく。
その中に一人、姿が違う個体がいた。
どうやらこいつが「フォグプリンス」というらしい。
バーンによると、フォグプリンスは賞金首になっていて、街で4,000キャットもの値段で売却できるんだとか。
いつか旅に飽きて、カネを稼ぐ手段に困ったとき、フォグプリンス狩りで生計を立ててもいいなと思ったマルコだった。
街を出る前にマルコはスケルトンのバーンと、今後の旅路について話をしていた。
古代の技術を探すのであれば、シェクを通り抜けて大陸の南西に進むといい。
「手付かずの遺跡がまだ沢山あるはずだ、マルコ」
バーンは楽しそうにつぶやく。ストークや他の仲間も楽しげだ。
途中のアドマグで、シェクの国王エサタに会うのも良いかもしれない。
アドマグの西側にはいくつか島が広がっていて、その中の一つに「ハイブの女王」が住む島があるとも聞く。女王と会うことで、何か学ぶことがあるかもしれないとマルコは思っていた。
大陸の各地でこれだけの大所帯を統制する女王のことだ、姿形からしてきっと尋常ではないだろう。
マルコ達は南に向かって歩みを進める。
アドマグでマルコはどのような扱いを受けるのだろう。
つづく