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マルコたちの進軍はとどまるところを知らない。
ナルコの誘惑という、ホーリーネーションの前哨基地が次なる目標だ。
「邪悪なトラブルメーカーめ!」
そう言いながら地面を這いつくばるパラディンにとどめをさしながら、ストークは考えていた。そういうお前達の方が、邪悪で救いようがないと。
ストークは以前、ブラックデザートシティで仲間になったスケルトンのサッドネイルと一緒に、ナルコの誘惑に迷い込んだことがある。鉄グモや理性を失ったスケルトンから息も絶え絶え逃げてきたときに、彼らにとってはこの駐屯地が救いのように見えたのだ。
しかし、建物に近づくやいなや、「異端者だ!スケルトンもいるぞ!!」というパラディンの一太刀を浴びて、サッドネイルは意識を失い、ストーク自身も深手を負った。その場を何とかしのいだものの、ストークにとってこの出来事は、ホーリーネーションに敵意を持つ直接的なきっかけとなったのだ。
外の敵を一通り倒した彼らは、建物内の掃討に移る。
異端審問官のサイアムが、この駐屯地を治めているようだ。
マルコの鉄拳が腹部に幾度か突き刺さった後、サイアムは床に伏した。
そしてストークがサイアムを拾い上げ、牢屋にぶちこんだ。
異端審問官が、異端者を閉じ込めていた檻に入るなど、これ以上の皮肉はないだろう。
残りのパラディンも片をつけ、残りは檻の中のサイアムだけとなった。
あらかじめマルコとストークは話し合っていた。
サイアムの首には15,000キャットもの賞金がかかっている。しかし、このような悪人は、自らの手で始末したいとストークは思っている。
マルコとしては、無理にこの場でサイアムを殺す必要はないと思いながらも、ホーリーネーションへの憎悪はストークと同じものである。すでに拠点には人質として高級異端審問官のセタを拘束しているし、幸い彼らはカネにも困っていない。
そしてストークは、あらかじめ決めていたように、サイアムを担いでデッドランドへ向かった。死にぞこないのパラディンはマルコが連れて行く。
すぐ近くに川がある。この川は酸の雨が降り注いだ結果できたものである。
そこにサイアムとパラディンを投げ込んだ。
サイアムの肢体が白い煙を上げて溶けていくのを、マルコとストークはじっと眺めている。サイアムは流れに揺られ、顔を酸の雨が降る空に向けた。
雨が顔を打ち、肉をそぎ落としていくところまでみて、マルコとストークはその場を離れた。
こうして、ナルコの誘惑は壊滅した。
サイアムを処刑したところで、ホーリーネーションにはさほど影響はないだろう。本気でホーリーネーションを潰そうと思うなら、周辺都市を攻略し、最後に皇帝フェニックスを倒すほかない。
次の狙いはオクランの拳だ。
つづく。