前回はこちら
毒ガスが蔓延する砂漠を通り抜けたら、そこは酸の雨が降り注ぐ大地だった。
Dead Landとは、なんともひねりのない名前だ。
強酸の雨粒が俺の体に当たって音を立てる。それ以外の音は何も聞こえなかった。
あてもなくさまよっていると、廃墟を見つけた。
厳重にロックされていたが、根気強くロックピックを続ける。
酸の雨に耐えられるコートを着ているから、時間は幾らでもかけられる。
何時間かの格闘の後、ついに扉の鍵を解除できた。
しかし、俺は中に入るのをためらっていた。ここにくるまでに沢山の恐ろしい怪物を見たからだ。
鉄で出来たクモ、理性を失ったスケルトン。そんな奴らが中にいる可能性が十分にある。扉を開けたら最後、そいつらにバラバラにされてしまうかもしれない。
ここまで何日もかけてきたんだ、危なくなったら走って逃げれば良い、そう自分に言い聞かせて俺はようやく扉を開いた。
ん、なんだこいつら。
「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」
とっさに俺は逃げ出した。というよりこの状況で逃げないやつなんかいるか?
しかしなにやら様子がおかしい、やつらは武器を腰に下げたままなのだ。
「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」
「おい、お前らなんか勘違いしてないか」
「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」
「俺はお前らの主人じゃないぞ」
「エラー」「エラー」「エラー」「ご主人様!」「ご主人様!」「エラー」
そろいもそろって同じ調子だ。会話が成り立たない。
しかし、不思議とこちらに敵意はないようだ。それに近くで見ると少し可愛くも見えてしまう。
「お前たちはなんと言う名前なんだ」
「Error Code 0xFFFFFF」
沢山の目線を感じながら遺跡漁りをするのは非常に気持ち悪かったが、古代のアーティファクトを沢山見つけることができた。
中でもAncient Bookを見つけられたのは非常に意味がある。これで拠点の技術力は一層よくなるに違いない。
バックパックもいっぱいになったので、いったん拠点に戻ろう。
しかしコイツらをどうしよう。どこまでも着いてくるぞ。
途中Skimmerと出くわしたが、Error Code 0xFFFFFFが集団でたこ殴りにするので、あっという間に倒してしまった。
「お前ら、なんとも心強いな」
「危機を回避したぞ!」「セーフティプロトコル完了」「ご主人様を守れ!」「エラー」「ご主人様は安全だ!」「危機を回避したぞ!」「エラー」「ご主人様は安全だ!」
「Error Code 0xFFFFFFなんて名前は長ったらしいし、これからお前達のことをECOSと呼ぶよ」
「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」「エラー」
どうやら不服らしい。
こうして楽しい旅路になるところだったが、一つ問題が浮上する。
ECOSは敵と味方を区別しないのだ。
途中に出会う人々に見境なく先制攻撃を仕掛ける。
「お前ら別に戦う必要ないぞ!」
「エラー」
「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」
反乱農奴に喧嘩を売ったり、Holy Nationの歩兵に殴りかかったりするうちに、ECOSたちの頭数はどんどん減っていた。
「拠点についたらちゃんと修理してやるからな」
「エラー」「ご主人様は安全だ!」
俺の脳裏には一つの疑念が浮かんでいた。
こいつらがもし拠点の仲間達を攻撃したらどうしよう。
クロスボウ射手に警戒しろと声をかけてから、俺は町に入った。
しかし心配は杞憂に終わったようだ。ECOSは住民達に手出しはしなかった。
「ご主人様」「ご主人様!」「ご主人様を守れ!」
仲間達は怪訝そうな顔で彼らを見つめる。
意外と良い奴らだからそのうちこの光景にも慣れてくれるだろう。
早速技術研究に取り掛かる。
ひょこっ
「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」「ご主人様を守れ」
・・・・・・
集中できねえよ!!!!
サボテンスティック食べてるときも刀鍛冶してるときもトイレにいるときも全部ついてくるやんお前ら。もしさ、仮にだよ。Littleちゃんとデートすることになったらどうすんだよ。綺麗な浜辺でLittleちゃんにプレゼントあげるとするやん。あの子はちょっと変わった武骨な女の子だから、俺が丹精こめて作ったNodachi(Catun1)プレゼントしながら「最初に出会ったときから好きでした」なんてやり取りするとするやん。そんでそん時にやで、
お前らが俺の後ろにピタッとくっついとったら雰囲気ぶち壊しやん。
「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」「ご主人様!」
もっとも綺麗な海辺なんてこのHengにはないし、Littleちゃんは俺に気がないからそんな場面起こりっこないがな。なんていわせんなよおい。
「エラー」
この時のエラーばかりは悪意を感じずにいられなかった。口数少ないだけで絶対自我あるよね、君達。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彼らスケルトンを修理するには、Skelton Repair Kitが必要となるが、町で買うと高くつくし、まだそれを製造できるほどのロボット工学技術は持ち合わせていない。
俺が街を出るとECOS達に危害が及ぶし、何より手当たり次第攻撃を加えるなんてのはもってのほかだろう。
しばらく考えた結果、俺はStorkに外の世界の冒険を任せることにした。
彼は遊撃部隊で実戦経験を重ねていて、そこそこ腕が立つようになったからだ。
俺のコートに着替えたStorkは、早速外の世界へと旅立った。
この死の大地で、次に俺達は何に出会うのだろうか。
今回みたいに友好的な出会いだといいが、、
つづく。