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荒野の真ん中で立ち尽くしていたおれの前に、
放浪者が一人、歩いていた。
ハイブか。
やつには申し訳ないが、生きていくためだ。その武器をよこしてもらおう。
犬君の加勢もあり、どうにかやつを倒して身包みはがすことができた。
その時俺はふっと冷静になってしまった。
何の罪もないハイブを一人殺して、つまらない棒を一つ手に入れた。
傷は痛むし、太陽と砂嵐は俺の体力よりも気力を奪っていく。
囚われの身から逃れたものの、状況は一向に好転しない。
この先どうしろというんだ、俺に。
なかば絶望しながらさまよっていたその時、一人の女を見かけた。
風貌からして脱走奴隷だろう。
彼女は俺に気付き、怯えた表情を浮かべる。
俺は近づき優しく声をかけた。
「心配するな、大丈夫だ。俺も君と同じ脱走奴隷の一人だ」
「あなたも脱走奴隷なの?ここは奴隷商人や帝国のスパイが多すぎて誰も信頼できないわ・・・」
「そうだな。しかし、この荒野で君一人で生きていく必要はない。俺と一緒に来ないか」
「ええ、わかったわ。はやくこの地獄から出ましょう」
こうして、Littleという女が旅路に加わった。
だが依然として俺達の難しい状況は変わらない。
二人とも町に入れない以上、どうやって食べ物を調達するかが問題となった。
隊商を見つけては、二人で採掘した銅を売って食料に換えた。
ちょうどHengのそばに鉱物が良く取れる場所があった。
しかも町のサムライが警備巡回していて、反乱農奴たちも近くに寄ってこない。
来る日も来る日も採掘を続けたある日、奴隷としての俺はついに世間から忘れ去られ、堂々とHengの町に入れるようになった。
町に入れるようになったら、俺には決めていることがあった。
採掘した銅を、Hengの町で建築資材に換えるということだ。
銅を採掘しながらLittleとずっと話していたんだ。
「俺達の理想郷を作ろう」と。
俺達のように、世間から見放された者たちがやり直せる町。
そして人さらいや奴隷商人達に怯えずに済む、強固な町。
それを二人と犬一匹で、この荒地に作る。
ここは水資源には乏しいが、質の高い銅と鉄の鉱山がある。
しかも交易路から少し離れているため、反乱農奴や奴隷商人といった脅威から見つかる可能性は低い。
また、背後には小高い丘がそびえている。
丘から周囲の偵察をすることも出来るし、丘に沿って防壁を建てることも出来るだろう。
俺達はここに、小屋を一つ建てる事にした。
この小屋に研究台を設置し、建物の研究を積極的に行っていく。
また、金がないので鉱山で銅を採掘する。
Littleもついに奴隷と認識されなくなったので、Hengの町に出て銅を売ってきてもらう。
しばらくして、石の採掘場と加工場を建設した。
この設備を使えば、建築資材を自分達の手で手に入れることが出来る。
そして、さらに大きな家も作れるようになった。
だが最近、俺達が目立つようになったからか、物騒な訪問客が目立つようになってきた。
やはり安心して作業をするには壁を作らなければならぬ。
せめて目立たないようにだけと、ありあわせのもので壁を作った。
昼夜問わず一心不乱に働いた結果、ついに家の資材がそろった。
少しずつ家が形になっていく。
そして、ついに初めての家がこの町に建った!
少しマトモな装備を手に入れる事が出来たので、次は資金と資材を求めて放浪出る。
また、仲間のリクルートも目的の一つだ。これ以上俺達二人で町を大きくしていくのには限界がある。
昔の俺達のように困っている人がいたら積極的に助けようぜ、Little。
二人と一匹は、つるはしを武器に持ち替えて旅に出た。
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初めての仲間と、初めての家を手に入れたMalko
理想郷建設への道はまだまだ遠い。
次はどのような運命が彼らに待ち受けているのだろうか。
つづく