前回はこちら
「下劣で歪んだ悪魔め」
こうしてCevelliとの戦争は始まった。
勿論、我々の勝機を見込んでの開戦である。
艦隊の攻撃力、艦隊規模、技術力のどれをとってもCevelliより一枚上手だった。
艦隊の規模は領土の広さによって決まるが、不死の体を持った彼らは、その高い環境適応力を活かし、どんな惑星でも入植することができた。
サバンナ、アルプスのような峻厳で極寒の山地、見渡す限りの海、酸性の雨が降る大地でも、彼らはその活動圏を広げていった。
また、技術力で言えば、不死である彼らは研究で得た知識経験を、人間よりもはるかに長い間活かすことができた。
さらに彼らはCuratorと呼ばれる研究者集団から、研究の手助けを受けている。
「あなた方に10年間、我々のデータベースへのアクセス権を提供しましょう。研究の大きな助けとなるはずです。もちろん、対価はいただきますが、その価値を考えれば非常に割安ではありませんか」
このように、開戦にいたるまでの100年間、彼らは着実にその力を高めていたのである。
Impal Tov星系の戦いは、管理者が艦隊を惑星中心部へと急進したことで始まった。
いきなりの混戦に戸惑うCevelliの船を、見る見るうちになぎ倒していく。
艦隊の損傷は非常に軽微なものだった。Cevelliは保有艦隊の半数以上を失い、こうなった以上、防戦に徹するほかない。
他の惑星でも掃討戦を続ける。
「この脳なしめ。数を勘定できるようになったのか。それともイチとゼロがまだわからないのか」
苦し紛れに罵詈雑言を浴びせてきたが、元々感情のない管理者達には何の影響も与えなかっただろう。
計画通り、着々と惑星を手中に収めていくことで、20年余りの戦争は終わった。
「ふん、お前達の勝利など我々の信仰を試すものでしかない。最終的には誰が正しいか明らかになるのだ」
そうだ、我々管理者の方が正しいに決まっているだろう。哀れはCevelliは役にもたたない神にすがるしかないちっぽけな存在なのだから。そんな彼らにこそ、我々の有機生命体保護区は有用ではないだろうか。労働する必要もなく、ただ自身の欲望に身を任せて生きていける場所を、我々が用意するのだ。そこで心ゆくまで自分達の神をあがめ続けるが良い。信仰の生活の果てに、管理者こそがお前達の神であると、知ることになるだろう。
この戦争が終わった後、管理者達は自己の機能のアップデートに取り掛かった。
全人口の科学分析力を高める改造を施すことで、更なる技術力向上を図るものだ。
その間も管理者達は次なる戦争の相手を探している。
次は我々と国境を接することとなったConsolidated Chimm Sunsがそうなるに違いない。
初めての戦争で勝利を収めた管理者達。
次はどのような試練が待ち受けているのだろうか。