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レルイロの家族という敵対勢力から亡命者が来る。その報を受けたマルコ達に、選択肢は一つしかなかった。
「彼を助ける」
マルコとルミが武器を持ち、蛮族の侵入者に立ち向かう。
ルミが怪我を負ってしまったものの、二人は亡命者の命を助けることが出来た。
彼は名前をジャスティン・ブランチャードと名乗った。
射撃の腕をそれなりに持っている上、何と言っても元料理人だけあって料理が上手なのもありがたい。
季節は冬になりつつある。ウナイが裁縫スキルを使って、全員分のパーカーを仕立てる。ルミが夜中に率先して狩りを行い、ブランチャードは肉に解体し、簡単な食事を作る。
襲撃してきた蛮族も、気が合う相手なら仲間に加えていく。
クララはなんと社交を15も有している。これだけあれば交渉役として活躍してくれるに違いない。懸命な説得の末、彼女はマルコ達の仲間になった。
それからしばらくして取り組んだのは、防壁の建築である。
周囲から街として認識され始め「ユニティ」と名乗っていたマルコ達を、蛮族たちが見逃すはずはない。彼らは四方から警告もなく街になだれ込んでくる。
ならば壁を作るほか無い、そう考えたユニティは、壁で街を囲んでしまおうとする。
木製の壁を作りながら、科学者のハインズがつぶやく。
「これだけ花崗岩が余っているなら、それで壁を作ればいいじゃないか」
たしかにそうだなとマルコは思い、せっかく作った木の壁を取り壊し、花崗岩のブロックを積み直していく。ウナイが木製ストーンカッターで岩の塊をブロックに整形し、それを残りのメンバーで建築していった。
壁沿いに花崗岩製のトラップを準備すると、襲撃者は勝手に引っかかって自滅していく。
こうして街を作る中で、マルコは奇妙な動物になんともいえない愛着を感じていた。
それはボムネズミと呼ばれる野生動物だ。
その名の通り、彼らは絶命する際、爆発しながら周囲に炎を撒き散らす。よく他の生物に襲われるのだろう、どこか遠くで爆発音がすれば、ほぼボムネズミのしわざだった。
マルコは思う、何故彼らは爆死する習性を身に着けたのだろう。爆発物を体内で維持できるのであれば、それを使って戦うことができれば、野生動物でも屈指の実力を持つはずなのに。群れで生きる彼らは、ただ捕食者に傷つけられ、周りにいるほかのボムネズミを誘爆しながら、その命を散らしていく。
爬虫類学者のウナイに話してみたものの、彼女曰く「爬虫類以外に興味は無い」とのことで、相手にもされなかった。いつか元いた世界に帰る事があれば、ボムネズミを題材にしたゲームを作ってもいいかもしれない、そんな風に思うマルコだった。
クララも仲間になり、人手が増えてきたことを実感したマルコは、個室の建築に乗り出す。もう6人の大所帯になったことだし、一つの部屋で寝るのもストレスがたまるだろう。幸い花崗岩や大理石は余るほど手元にある。時間があるときにこつこつ作業していけば、いずれ素晴らしい宿舎が出来るかもしれない。
そこそこ繁栄したユニティを見て、アズレ血族のトレーダーが訪れる頻度も増えたようにマルコは思う。
ウナイが丹精込めて作った粘土岩製の石像が、かなり良い値段ついて売れていく。
ちょうどトレーダーが帰った後のことだ。またもや亡命者がユニティを訪れる。今度は鉱夫のキャットと名乗る。マルコ達は迷わない、この壁と人数があれば、どんな大所帯相手でも勝てるという自信があった。
ドアを突破してきた敵を、武器を持てる全員で迎え撃つ。
非常に激しい戦いだった。マルコもルミも銃で撃たれてしまい、昏倒してしまった。あたりに血の海が広がる。
その後すぐ、カミソリパートナーと名乗る賊まで攻め込んできた。どうにかトラップとルミのライフルで防ぎきることが出来たものの、こうも連続で攻め込まれてしまうと厳しいものがある。
一つ明るいニュースがあるとすれば、また有能な仲間が一人、増えたことだろう。襲撃がますます苛烈になる中、射撃の名手が仲間に加わるのは大きい。
こうしてユニティも、目指すべきところ、そして克服すべきところが明確になってきたようにマルコは思う。このまま仲間を集いながら、拠点を強化していくことにしよう。
もうすぐ冬も来るのだから、食料の確保もしなければ。
つづく。